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『IF』


ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: アイザック・アシモフ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1984/04
  • メディア: 文庫



歴史の中で『たら、れば』を語ることは詮無きことだ。
だけど、それは同時に歴史愛好者にとっての楽しみでもある。
たくさんの『たら、れば』を想像し、その結果の歴史の推移を思い描く。
その結果、世界がどんなに変わるかを。

今回は一つの『if』を語ってみたい。
『太平洋戦争時の米国大統領がもう少し賢かったなら』という話である。
太平洋戦争を戦った大統領は二人、ルーズベルトとトルーマンだ。
時期的に微妙なので、二人の内どちらが対象かは特定しない。


太平洋戦争は元々、米国にとっては本筋ではない戦いだった。
本筋はあくまでヨーロッパ戦線であるが、当時米国は対外不干渉を国策としていた。
だから参入できない。
それでもルーズベルトには参入したい理由があった。
禁を破って英国と中国(蒋介石の国民政府)に資金貸与していたからだ。
もしもこのまま英国が負け(実際に劣勢であった)、
資金回収が困難になったら政治問題と化し、責任が追及される。
彼にとってそれは避けたい事態であった。
ヨーロッパでの戦いに米国を巻き込み、戦いに勝利し、
英国から資金回収することが彼の望んだことだった。
太平洋戦争は米国がヨーロッパの戦いに参加する為の口実、いわば裏口だった。
日本が戦争を仕掛けてきた。
だから是非も無く戦争に突入する。
ヨーロッパ戦線には、その日本の同盟国であるドイツを叩く、という名目で参入した。
ここまでは歴史の事実である。


さて、『大統領がもう少し賢かったなら』、太平洋戦争の勝ちが見えた時点で、
それ以上日本と戦い続けることに意味を見出せなかっただろう。
その先にあるのは事実としての勝利と、『戦争に勝った大統領』という名誉だけである。
それは自動的に手に入る。
ただし、多くの命と引き換えであること、
得られる栄誉はあくまで個人的なものでしかないことを考え合わせると、
あまり賢い選択とはいえない。
大統領として真の国益を考えるなら、『勝ちが決まった戦い』を勝つよりも、
『これから始まる戦い』を有利に始めることに重きを置くべきだろう。
『これから始まる戦い』―、すなわち、『共産主義』との戦いである。

共産主義との戦いは、当時、誰もが意識しながら、
誰もが一歩を踏み出していない、
(目先の戦争で手一杯で、踏み出す余裕が無かった)懸案事項であった。
その問題に、他者に先んじて先手を打っておくのだ。

具体的に言うと、日本と休戦協定を結ぶ。
勝勢が決定的になってから(たとえばミッドウェー海戦の後など)休戦協定を持ちかければ、
かなり優位な交渉ができるだろう。
協定の条件として、蒋介石と共闘して共産主義を中国から排除することを求める。
あえて日本の力を温存させ、その力を毛沢東にぶつけるのだ。
当時中国戦線は三つ巴の戦いであった。
即ち、蒋介石の国民政府、日本陸軍の傀儡の中国政府、
そして毛沢東の共産主義のグループだ。
史実においても、日本は中国本土から手を引くことに異存はなかったし、
(満州と仏領インドシナだけは堅持したかった)
蒋介石とも休戦の動きはあったから、日本にしても無理な話ではない。
これには中国から共産主義を駆逐すると言う一義的な目的の完遂だけでなく、
スターリンをけん制する狙いもある。
そしてこれらの話がまとまれば、米国は全力を持ってドイツを叩ける。

うまくすれば蒋介石が勝者となり、
共産主義ではない中国が現出したかもしれない。
そして日本の力が温存されれば、満州がソ連の南下を防ぎ、
ベトナムにおいても共産主義が大きな力を持つことはなかったであろう。
(史実では日本が負け、日本の統治から離れた地域に共産主義が入り込み、
 米国はその地域での戦争に巻き込まれる。=後述)
また、ヨーロッパにおいても進行速度が速まり、結果、
共産主義の拡散をいくらかでも抑えられたかもしれない。
これだけでも共産主義との戦いを、かなり有利に始められる。
そういう可能性が、大統領の決断しだいで確かにあったのだ。


史実では太平洋戦争は継続され、日本は負け、
蒋介石もまた負けて中国は共産主義の国になった。
戦後処理の混乱期を衝かれ、朝鮮半島北部も共産主義勢力に奪われ、
ベトナム(=旧仏領インドシナ)にも共産主義勢力の台頭を許した。
結果として米国は朝鮮戦争、ベトナム戦争と二つの戦争を戦わねばならなくなった。
朝鮮戦争は未だ休戦状態であるし、北朝鮮は世界の懸念材料になっている。
今後の推移によっては、米国は更なる困難を強いられるだろう。
ベトナムでは米国ははっきりと負け、恥をかき、非難と自省だけが収穫物であった。
そして現在、共産主義の中国は潜在的敵性国家として大きくその存在を表してきている。
(蒋介石が勝っていたら、良きパートナーになっていたかもしれないのに。)
そして戦後、米国は赤狩りに狂奔し、共産主義との戦いに多大な労力を消費していく。
なんとも労力の無駄な浪費のように見える。
これほど共産主義の駆逐に必死になるのなら、
もっと早くから対処を始めていればいいのに、と思う。
これもすべて大統領の決断(決断しなかった)の結果なのだ。
70年たった今でも、その影響は続いている。
その事実に軽いめまいを覚える。


今日もまた、大統領は決定し続ける。
それらの決定が今後どういう影響を後世に残していくのか、我々も少し考えた方がよいと思う。




今週の一曲
DEPAPEPE 『 Hi-D!!! 』


Let's Go!!!

Let's Go!!!

  • アーティスト: DEPAPEPE,DEPAPEPE,TAICHI NAKAMURA
  • 出版社/メーカー: SME Records
  • 発売日: 2005/05/18
  • メディア: CD



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